1.導入編。


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「私、NAWNなんかやめるから!!」

西陽の射す指導室にて。のんのの眼が自分の眼を責めてくる。
その顔は真剣すぎてコワいくらいだった…。
とは言え、自分もソレに折れるつもりなどなかった。

「勝手にせぇや!こっちも追い出す手間が省けて助かるっちゅーねん!」

その眼に対抗する自分。数秒の間。
一瞬早くのんのの眼が自分から背かれました。

「あ、あの、ないとさん…!のんのさん…!」

自分らの間に入ってオロオロしているわこ。
しかし自分ものんのも、わこの言葉には耳を貸そうともしない。

「ないとくんなんか…もう知らない!」

そう一言だけ残して指導室を飛び出すのんの。
自分は表情を変える事無く、その背中を凝視してました。


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何が、そうさせたのか?

これまで順風満帆すぎる歴史を作ってきた我々NAWN。
メインバイトである個別指導における、ないと・アーチ・わこ・のんのの4人。
それぞれ互いを尊敬し合い、時には共に苦労も乗り越えてきました。

ところが、つい最近、上述のような事が起きてしまいました。
NAWNに対して、マジギレした事はありません。
これは自分にも言える事であるが、同時にのんのにも言える事でした。

何が、そうさせたのか?

その答えは、数日前の飲み会にあります。











その日、某企業の面接を終えた自分は、
就活生のんのとメイバイ先上司の黒河さんと久し振りに飲みに行きました。
話は主に、数日前にオーストラリアへの留学へ行ったアーチの話や、
結婚を年内に見込んでる黒河さんのノロケ話などが展開していきました。

そのような話が一区切りついた時、黒河さんが思い出したように、とある話を切り出したのです。

「そーいやさ、この前わこ達2年と飲みに行ったんだけどさ。」

メイバイの仲間とは言わずもがなNAWNだけではなく、
その他の仲間とも仲の良さは周囲に自慢できるほどのものです。
黒河さんは率先して指導員のどのような組み合わせでも親睦会を開いてくれています。

「あ、最終的には4人で楽しく…って飲み会ですか?」

のんのもわこから話は聞いていたのでしょう。どうやら親睦会は成功したようでした。

「そこでさ、わこのヤツ、何て言ったと思う?」

4杯目の中ジョッキを啜りながら、黒河さんは話を続けました。

「『ないとさんは、ちょ〜っと上眼遣いをすれば何でも引き受けてくれる何でも屋さん♪』」

「… … …^^;」

自分は即答する事はできませんでした。のんのはちょっと笑ったみたいでしたけども。

「『のんのさんは、ちょ〜っと困ったフリすれば、いつでも助けてくれるヒロインさん♪』」

「… … …^^;」

のんのも、即答する事はできませんでした。
とは言え、自分はさっきののんののように笑う事はできませんでした。

「なぁお前ら、わこに上手〜い様に使われてるんじゃないか?^^;」

黒河さんは数秒、間を置いた後にサラッと尋ねてきました。
それに対し、のんのが率直な感想と思われる発言を。

「何でも屋さん、とヒロインさん、と思われてるとはねぇ…^^;」

当然、わこはココロからそのようには思っていないであろうが、
少しでもそのように思われていたと気がつくと、やはり少々ショックです。
それは、自分ものんのも同じ気持ちだったと思います、多分。

「ちょっとコレは考え方を改め直してもらわんとなぁ;」

「そーだろ?そーだよな。」

自分もポロッと率直な意見を口にしました。
と同時に、黒河さんもソレに賛同の声を上げたのです。

「でも、どーやるんですか??考え方を変えるって結構難しい…ですよね?」

「うん、そこで、ないととのんのの協力が必要になるんだな、うんうん。」

「自分とのんのの協力?どーゆー事ですか?」

何となく満足気な黒河さんに対し、自分とのんのはワケも分からずにキョトン顔。

「ふふふ、いいか?ちょっとばかり、わこをからかってみるんだ。」

酔いが廻ってるのかそうでないのか、
黒河さんの顔はいつもより一層ダーク気(だーくけ)を帯びていたように思えました。

「ソレって…ドッキリみたいな?」

「単純な話、そうだな。ちょっとわこを驚かして、最後はハッピーエンド!みたいな。」

「ちょっと可哀想ですよ;」というのんのの声も上手くかわし、
黒河さんは『わこ、ドッキリ大作戦』の詳細を自分ら2人に伝え始めました。











説明30分。黒河さんが意図するドッキリの全貌は大体理解できました。
当初、協力を躊躇していたのんのも、いつしかヤル気になってたし。
自分も言うまでもなくドッキリに参加するつもりやったし。

そんなこんなで我々は、わこにドッキリを仕掛ける事になったのでありました。



(つづく)

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