NAWN崩壊危機。3
2008年3月15日 旧・お仕事。こんばんは。今回は3話目です。
とりあえずドッキリの話は今回で完結となります。
3.完結編
〔あらすじ〕
黒河さん考案の、わこをターゲットとしたドッキリ作戦を実行しました。
ないととのんのの衝突。それを前にわこは困惑の日々を送った事でしょう。
しかし、途中までは上手くいっていたものの、黒河さんの最後の一言で、
わこは予想外にも、突然バイト先を後にしてしまいました。
時刻は18時を過ぎ、外は暗くなってきました。
黒河さんに言われて、わこを探しにバイト先を出る自分達。
「そんなに遠くへは行ってないよね。とりあえず、駅行ってみる?」
「ん〜、わざわざ人混みには行かへんかもな。敢えて逆方向でも探してみるか。」
「そだね。手ぶらでお家まで行かないと思うし…。」
というワケで、駅とは逆方向である神社の参道の方へ。
時刻は18時を過ぎ、辺りは段々と暗くなってきました。
バイト終わりですので格好はスーツでしたが、やはり少々冷えてきてました。
「ねぇないとくん。こういう時ってさ。」
「ん?」
「何となく、なかなか見つからない気がしない?」
「あぁ〜分かる分かる!でも早く見つけないとな。…冷えてもきたし。」
なんて話をしだした参道前でしたが。。。
「うん、そだね!わこちゃんのケータイに電話でも… … …あ!」
と、のんのが参道奥のベンチにいるわこを発見。言わずもがな想定外。
「わこちゃ…!」
「待ってのんの!」
「え?」
わこの方へ駆け出すのんのを慌てて抑止。
わこは、ベンチの上で体育座りを。更には丸まりながら誰かに電話をしているようでした。
「…わこちゃん、誰かに電話してるね。」
「誰に電話してるんかな?」
「親御さん、だったらちょっと物事大きくなっちゃうよね;謝らなきゃ;;」
「…ちょっと後ろに廻ってみるか。」
参道沿いには岩や背の高い草むらが並立していたので、ベンチの後ろには廻りやすい構造となっていました。
自分とのんのは、わこの座るベンチの後ろに静かに移動しました。会話の聴き取れる距離まで。。。
「ないとさん…のんのさん… … …選べないよぅ…。」
自分達が背後の草むらに着いた時には、わこは震えた声で話していました。
低い姿勢を保ちつつ、自分とのんのは黙ってその話を聴いていましたが、
まだ、わこが誰と話しているかは分かりませんでした。
「ないとくん…、黒河さんに連絡した方がいいかな?」
「あ、そやね。ちょっくら連絡してくるわ。」
草むらの後ろからちょっと離れた所で黒河さんに電話を掛けるワタクシ。
のんのは引き続き、わこの電話を聴いていました。
「え?そのまま、ですか? はい。分かりました。」
黒河さんはわこの居場所や自分達の状況を聴くと、自分達にその場で待機するように命じました。
特に理由を追究することもなく、自分は電話を終え、のんののもとへ戻ってきました。
「…何か進展あった?」
「ううん。でも、何か…わこちゃんが可哀想で泣けてきちゃった。。。」
のんのの小声も震えてました。それだけわこの想いがのんのに伝わってきたのでしょう。
わこは相変わらずケータイを両手で握り締めたまま、
電話先の誰かに向かって半ば一方的に話しているようでした。
そして漸く、わこは電話先の人物の名を洩らしたのでした。
「…ねぇアーチならどぅする…?ねぇアーチ… … …アーチィ…!」
そのセリフを聞いて自分達はハッとしました。
わこは、現在オーストラリアに居るアーチに海を越えた電話をしていたのです。
NAWNのうち、ないとVSのんのの衝突、反発。
そんな中、わこはたとえどれだけ距離がかけ離れていても、
NAWNのうち、残ったアーチを頼ったのです。
わこのそんな真摯な姿勢を見れば、黒河さんとの命令もアタマから消えていました。
自分は、のんのに草むらから出て、わこに真実を伝えようという提案をしました。
しかし、その時、わこを呼ぶ声が別方向からしたのです。
「わこ。」
声を掛けたのは自分でものんのでもではなく、バイト先から駆けつけた黒河さんでした。
「わ!わわゎ、黒河さん!?」
わこはハッとしてケータイを閉じ、ベンチから立ち上がって黒河さんと対峙しました。
数秒、間を置いた後、わこは涙をスーツの袖で拭って。
「黒河さん…。アタシ、やっぱりえらべな…!」
「わこ、覚えてるか?」
黒河さんはわこのセリフを遮って、更に質問をぶつけました。
「覚えてる、な、何をですか?」
わこは真剣な顔で黒河さんの質問を復唱しました。その時、涙はありませんでした。
黒河さんはわこのもとへ歩み寄り、わこが先ほどまで座っていたベンチに腰掛けました。
恐らく、待機する自分達にも話が聴きやすいようにしてくれたのでしょう。
ベンチに腰掛けると同時に、黒河さんは立ったわこをベンチに座るように促しました。
「ほら、この前の2年会でさ。」
「2年会…。」
「そこで、お前、こう言ったの覚えてるか?」
自分達との飲みの時に黒河さんが教えてくれた2年会。
その2年会で、わこは本心かどうか分からなかったのですが、
自分とのんのの事を‘便利屋’呼ばわりしたのだとか。
それが今回のドッキリの発端でもありました。
「あ、あれは… … …。」
「あれは…なんだ?」
「…見栄、です。。。」
「見栄?何で見栄を張る必要があるんだ?」
「わからない…です。でも、決してないとさんとのんのさんをブジョクしたワケではなくて…!」
(わこ…自分はその気持ち…)
「…よく分かるよ…その気持ち。。。」
自分の想いに乗るように、横でのんのがそう呟きました。のんのの顔からも涙は消えていました。
自分ものんのも、わこが本心で自分達を‘便利屋’呼ばわりしたのではないという事は分かっていました。
「…ちょっとした嫉妬心か何かか?」
黒河さんが、わこに優しい口調で話し掛けます。
わこは黙って、しかし大きく首を縦に振りました。
黒河さんがオジ様っぽく(?)言葉を続けます。
「うむ、あれだろ?極端に言えば『アタシ以外にあまり優しくしないでね〜』ってヤツだ。」
その言い方は少々ナゲヤリというか、そんな感じの口調でした。
わこはちょっと寂しそうな顔になって、視線を黒河さんからずらしたようでした。
しかし…。
「…アタシもその気持ち、分かるよ。」
黒河さんの一言は、我々にオドロキを与えました。
視線を外していたわこも、驚きの表情を見せて視線を再び黒河さんへと向けました。
「だってさ、それだけNAWNの絆って相当カタイんじゃないの?アタシにはそう見える。絆がカタイ分、ちょっとでも構ってもらえないとかなり不安になる。そんな感じだろ?」
黒河さんは少々恥ずかしそうにそう早口で述べました。
わこはまだ驚いているようで、コメントを返せずにいました。すると…。
「わこ。NAWNの絆は、“カタかった”んじゃないぞ?今でも“カタイ”んだ。
…なぁ?ないと。のんの。」
黒河さんは唐突に自分とのんのを呼びました。
突然のお呼び出しに慌てる自分らでしたが、ベンチ背後の草むらから出て、ベンチの前へイソイソと。
言わずもがな、わこは驚き+驚きで何が何だか理解していない状況でした。
「ないとさん…のんのさん…何で??」
「わこ。…あのさ、実は自分とのんのはケンカなんかしてなかったんだ。」
とりあえず自分は‘ドッキリ’という言葉は出さず、遠回しにネタばらしを試みました。
「うん。ゴメンね、心配かけて…。あのね、ケンカは、その…演技だったの。」
「…え???」
やはり未だに状況判断ができなかったようで、むしろ不安な表情になるわこ。
自分の顔を不安そうに見つめ、その後のんのの顔へ。そしてニヤけた黒河さんの顔へ。
「…え!?何なんですか?何なんですか!?」
わこは軽いパニック状態でした。と、ここでようやく首謀・黒河さんが口を開きました。
「わこ、ドッキリだよ、ドッキリ!ぜ〜んぶウソ!」
と言っても、やはりわこにはまだ分かってもらえず、表情は固まったままでした。
「ど、どっきり?何が…どっきり??」
「だ〜か〜ら〜、ないととのんのがケンカしたってのがドッキリ!あと、のんのが個別指導やめるってのもドッキリ!全部、アタシが仕切ったの。分かった??」
「…う… … …あー!あー!!!」
状況判断が済んだのか、わこは突然大声で泣き出しました。その様子に、のんのももらい泣き。
「ゴメンね、わこちゃん…!ゴメンね!!」
涙を流すのんのの胸にわこが勢いよく飛び込みます。
それを、のんのは力強く受け容れました。
「のんのさんッ…!良かった… アタシ… ずっとNAWN…。」
「…うん…いるよ…!私は、ず〜〜〜っと、NAWNにいるよ。ず〜〜〜っと、わこちゃんと一緒。」
わこの声はもはや文章になっていませんでしたが、
のんのはわこの言いたい事を汲み取ったらしく、涙を流しながらも冷静に受け答えました。
「ううん、私だけじゃないね。ないとくんも、アーチくんも…NAWNはいつまでもNAWNだよ。」
のんのの言葉が自分の胸を打ちます。
自分は、NAWNの絆の深さを改めて知ったと同時に、
その絆をこれからもずっと深めていかなければならないと悟りました。
「ないと。」
「はい。」
「結局、わこはのんのを選んだんだな。嫌われたな、お前。」
「そーですね…ってちゃいますやん!!ドッキリばらして選ぶ必要なくなったやないですか!」
なんて、(抱き合う2人を見て思ったのでしょうね)、
そんな不規則な黒河さんの冗談にもツッコミを入れられる程にまで事態は落ち着きました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時刻は20時。気温は思った以上に下がり、我々は足早にバイト先に戻る事になりました。
黒河さんが抜けた事で、もぬけのカラになったと思われていたバイト先も、
ちゃんと校舎長がいらっしゃったのでセキュリティ面でも問題ありませんでした。
ただ黒河さんはその後、長時間持ち場を離れていた事の言い訳をしなくてはならない状況になったとかならなかったとか。(笑)
自分達はようやく私服に着替え、校舎長に言い訳する黒河さんを置いて3人でバイト先を後にしました。
そう、ドッキリの始まったあの日と同じ。
「はぁ〜〜〜〜〜。。。」
のんのが溜息を洩らします。その仕草にギョッとするわこ。
「な、何もないから、安心し!」
自分はわこに慌ててそう伝えました。わこの眼は少々疑いの色を見せていました。
まぁ無理もないですけどね;
「あ、ゴメンね、溜息; 今日1日長かったなぁって思って。」
のんのが申し訳なさそうに、わこメインに謝ります。
ようやくわこもいつもの笑顔を浮かべました。
「もぉ〜、黒河さんにもビックリでしたけど、ないとさんとのんのさんの演技にもビックリでしたよ!」
当初、自分とのんのが不安に思っていた演技面は、どうやら何の問題もなかったようでした。
勘の鋭いわこをも欺き通した事が一番の裏付け証拠でしょうか。
「そーいや、わこ。参道でのアーチの電話、急に切って大丈夫やったん??」
「あ、そーだよ!黒河さんが来て、急に切っちゃったよね…??」
「あ、あれですか?あれ、繋がってないですよ;」
「…え?」
「電話しようと思ったんですけど、通じなかったんです。でも、何か、電話越しに話せば、アーチに伝わるかなぁ〜って;…どーかしてましたね、アタシ;;」
「あの状況なら無理ないよぉ;私がわこちゃんの立場だったら、同じ事してたよ、きっと;」
わこの返答にすかさずのんのがフォロー。やはり、のんのは広義の‘ケア’が上手いです。
歩けば歩くほど、次第に普段のNAWNの会話に戻ってきました。
そして10分後、駅まで着くと、のんのが急に立ち止まりました。
「ね〜ぇ、わこちゃん?ないとくんと一緒にご飯食べよっか!おなか減ったよねぇ??」
「あ、賛成ですっ♪ないとさんも行きますよねっ!行かないと、ここで大泣きしますっ!」
のんのの急な提案にもわこは即答で賛成しました。わこに押されて自分も言わずもがな賛成。
その時のわこの声は、ホンットにココロから出したような、嬉しそうな声でした。
個人的には、この時のわこの声が、このドッキリ企画の中で最も印象に残ってる声です。
まぁ個人論はいいとして、
そーゆーワケでそのまま駅には入らず、駅前通りの居酒屋に入る事に決定しまして。
ゆっくり食事しながら、ドッキリの詳細や、わこのホンネなどをほぼ夜通し吐露しまくりました。
その場において、そして後日、今度は自分とのんのが度肝を抜かれる事になったんですけどね。
…それはまた別のお話。。。
今回学べた事は、
【意識の深さを知るという事は難しいけれども、その深さを知ればその深さに合った大きなものが得られる】
という事ですかね。大変勉強になりました。
長い話となりましたが、読んでくださった方々、多謝です!!
とりあえずドッキリの話は今回で完結となります。
3.完結編
〔あらすじ〕
黒河さん考案の、わこをターゲットとしたドッキリ作戦を実行しました。
ないととのんのの衝突。それを前にわこは困惑の日々を送った事でしょう。
しかし、途中までは上手くいっていたものの、黒河さんの最後の一言で、
わこは予想外にも、突然バイト先を後にしてしまいました。
時刻は18時を過ぎ、外は暗くなってきました。
黒河さんに言われて、わこを探しにバイト先を出る自分達。
「そんなに遠くへは行ってないよね。とりあえず、駅行ってみる?」
「ん〜、わざわざ人混みには行かへんかもな。敢えて逆方向でも探してみるか。」
「そだね。手ぶらでお家まで行かないと思うし…。」
というワケで、駅とは逆方向である神社の参道の方へ。
時刻は18時を過ぎ、辺りは段々と暗くなってきました。
バイト終わりですので格好はスーツでしたが、やはり少々冷えてきてました。
「ねぇないとくん。こういう時ってさ。」
「ん?」
「何となく、なかなか見つからない気がしない?」
「あぁ〜分かる分かる!でも早く見つけないとな。…冷えてもきたし。」
なんて話をしだした参道前でしたが。。。
「うん、そだね!わこちゃんのケータイに電話でも… … …あ!」
と、のんのが参道奥のベンチにいるわこを発見。言わずもがな想定外。
「わこちゃ…!」
「待ってのんの!」
「え?」
わこの方へ駆け出すのんのを慌てて抑止。
わこは、ベンチの上で体育座りを。更には丸まりながら誰かに電話をしているようでした。
「…わこちゃん、誰かに電話してるね。」
「誰に電話してるんかな?」
「親御さん、だったらちょっと物事大きくなっちゃうよね;謝らなきゃ;;」
「…ちょっと後ろに廻ってみるか。」
参道沿いには岩や背の高い草むらが並立していたので、ベンチの後ろには廻りやすい構造となっていました。
自分とのんのは、わこの座るベンチの後ろに静かに移動しました。会話の聴き取れる距離まで。。。
「ないとさん…のんのさん… … …選べないよぅ…。」
自分達が背後の草むらに着いた時には、わこは震えた声で話していました。
低い姿勢を保ちつつ、自分とのんのは黙ってその話を聴いていましたが、
まだ、わこが誰と話しているかは分かりませんでした。
「ないとくん…、黒河さんに連絡した方がいいかな?」
「あ、そやね。ちょっくら連絡してくるわ。」
草むらの後ろからちょっと離れた所で黒河さんに電話を掛けるワタクシ。
のんのは引き続き、わこの電話を聴いていました。
「え?そのまま、ですか? はい。分かりました。」
黒河さんはわこの居場所や自分達の状況を聴くと、自分達にその場で待機するように命じました。
特に理由を追究することもなく、自分は電話を終え、のんののもとへ戻ってきました。
「…何か進展あった?」
「ううん。でも、何か…わこちゃんが可哀想で泣けてきちゃった。。。」
のんのの小声も震えてました。それだけわこの想いがのんのに伝わってきたのでしょう。
わこは相変わらずケータイを両手で握り締めたまま、
電話先の誰かに向かって半ば一方的に話しているようでした。
そして漸く、わこは電話先の人物の名を洩らしたのでした。
「…ねぇアーチならどぅする…?ねぇアーチ… … …アーチィ…!」
そのセリフを聞いて自分達はハッとしました。
わこは、現在オーストラリアに居るアーチに海を越えた電話をしていたのです。
NAWNのうち、ないとVSのんのの衝突、反発。
そんな中、わこはたとえどれだけ距離がかけ離れていても、
NAWNのうち、残ったアーチを頼ったのです。
わこのそんな真摯な姿勢を見れば、黒河さんとの命令もアタマから消えていました。
自分は、のんのに草むらから出て、わこに真実を伝えようという提案をしました。
しかし、その時、わこを呼ぶ声が別方向からしたのです。
「わこ。」
声を掛けたのは自分でものんのでもではなく、バイト先から駆けつけた黒河さんでした。
「わ!わわゎ、黒河さん!?」
わこはハッとしてケータイを閉じ、ベンチから立ち上がって黒河さんと対峙しました。
数秒、間を置いた後、わこは涙をスーツの袖で拭って。
「黒河さん…。アタシ、やっぱりえらべな…!」
「わこ、覚えてるか?」
黒河さんはわこのセリフを遮って、更に質問をぶつけました。
「覚えてる、な、何をですか?」
わこは真剣な顔で黒河さんの質問を復唱しました。その時、涙はありませんでした。
黒河さんはわこのもとへ歩み寄り、わこが先ほどまで座っていたベンチに腰掛けました。
恐らく、待機する自分達にも話が聴きやすいようにしてくれたのでしょう。
ベンチに腰掛けると同時に、黒河さんは立ったわこをベンチに座るように促しました。
「ほら、この前の2年会でさ。」
「2年会…。」
「そこで、お前、こう言ったの覚えてるか?」
自分達との飲みの時に黒河さんが教えてくれた2年会。
その2年会で、わこは本心かどうか分からなかったのですが、
自分とのんのの事を‘便利屋’呼ばわりしたのだとか。
それが今回のドッキリの発端でもありました。
「あ、あれは… … …。」
「あれは…なんだ?」
「…見栄、です。。。」
「見栄?何で見栄を張る必要があるんだ?」
「わからない…です。でも、決してないとさんとのんのさんをブジョクしたワケではなくて…!」
(わこ…自分はその気持ち…)
「…よく分かるよ…その気持ち。。。」
自分の想いに乗るように、横でのんのがそう呟きました。のんのの顔からも涙は消えていました。
自分ものんのも、わこが本心で自分達を‘便利屋’呼ばわりしたのではないという事は分かっていました。
「…ちょっとした嫉妬心か何かか?」
黒河さんが、わこに優しい口調で話し掛けます。
わこは黙って、しかし大きく首を縦に振りました。
黒河さんがオジ様っぽく(?)言葉を続けます。
「うむ、あれだろ?極端に言えば『アタシ以外にあまり優しくしないでね〜』ってヤツだ。」
その言い方は少々ナゲヤリというか、そんな感じの口調でした。
わこはちょっと寂しそうな顔になって、視線を黒河さんからずらしたようでした。
しかし…。
「…アタシもその気持ち、分かるよ。」
黒河さんの一言は、我々にオドロキを与えました。
視線を外していたわこも、驚きの表情を見せて視線を再び黒河さんへと向けました。
「だってさ、それだけNAWNの絆って相当カタイんじゃないの?アタシにはそう見える。絆がカタイ分、ちょっとでも構ってもらえないとかなり不安になる。そんな感じだろ?」
黒河さんは少々恥ずかしそうにそう早口で述べました。
わこはまだ驚いているようで、コメントを返せずにいました。すると…。
「わこ。NAWNの絆は、“カタかった”んじゃないぞ?今でも“カタイ”んだ。
…なぁ?ないと。のんの。」
黒河さんは唐突に自分とのんのを呼びました。
突然のお呼び出しに慌てる自分らでしたが、ベンチ背後の草むらから出て、ベンチの前へイソイソと。
言わずもがな、わこは驚き+驚きで何が何だか理解していない状況でした。
「ないとさん…のんのさん…何で??」
「わこ。…あのさ、実は自分とのんのはケンカなんかしてなかったんだ。」
とりあえず自分は‘ドッキリ’という言葉は出さず、遠回しにネタばらしを試みました。
「うん。ゴメンね、心配かけて…。あのね、ケンカは、その…演技だったの。」
「…え???」
やはり未だに状況判断ができなかったようで、むしろ不安な表情になるわこ。
自分の顔を不安そうに見つめ、その後のんのの顔へ。そしてニヤけた黒河さんの顔へ。
「…え!?何なんですか?何なんですか!?」
わこは軽いパニック状態でした。と、ここでようやく首謀・黒河さんが口を開きました。
「わこ、ドッキリだよ、ドッキリ!ぜ〜んぶウソ!」
と言っても、やはりわこにはまだ分かってもらえず、表情は固まったままでした。
「ど、どっきり?何が…どっきり??」
「だ〜か〜ら〜、ないととのんのがケンカしたってのがドッキリ!あと、のんのが個別指導やめるってのもドッキリ!全部、アタシが仕切ったの。分かった??」
「…う… … …あー!あー!!!」
状況判断が済んだのか、わこは突然大声で泣き出しました。その様子に、のんのももらい泣き。
「ゴメンね、わこちゃん…!ゴメンね!!」
涙を流すのんのの胸にわこが勢いよく飛び込みます。
それを、のんのは力強く受け容れました。
「のんのさんッ…!良かった… アタシ… ずっとNAWN…。」
「…うん…いるよ…!私は、ず〜〜〜っと、NAWNにいるよ。ず〜〜〜っと、わこちゃんと一緒。」
わこの声はもはや文章になっていませんでしたが、
のんのはわこの言いたい事を汲み取ったらしく、涙を流しながらも冷静に受け答えました。
「ううん、私だけじゃないね。ないとくんも、アーチくんも…NAWNはいつまでもNAWNだよ。」
のんのの言葉が自分の胸を打ちます。
自分は、NAWNの絆の深さを改めて知ったと同時に、
その絆をこれからもずっと深めていかなければならないと悟りました。
「ないと。」
「はい。」
「結局、わこはのんのを選んだんだな。嫌われたな、お前。」
「そーですね…ってちゃいますやん!!ドッキリばらして選ぶ必要なくなったやないですか!」
なんて、(抱き合う2人を見て思ったのでしょうね)、
そんな不規則な黒河さんの冗談にもツッコミを入れられる程にまで事態は落ち着きました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時刻は20時。気温は思った以上に下がり、我々は足早にバイト先に戻る事になりました。
黒河さんが抜けた事で、もぬけのカラになったと思われていたバイト先も、
ちゃんと校舎長がいらっしゃったのでセキュリティ面でも問題ありませんでした。
ただ黒河さんはその後、長時間持ち場を離れていた事の言い訳をしなくてはならない状況になったとかならなかったとか。(笑)
自分達はようやく私服に着替え、校舎長に言い訳する黒河さんを置いて3人でバイト先を後にしました。
そう、ドッキリの始まったあの日と同じ。
「はぁ〜〜〜〜〜。。。」
のんのが溜息を洩らします。その仕草にギョッとするわこ。
「な、何もないから、安心し!」
自分はわこに慌ててそう伝えました。わこの眼は少々疑いの色を見せていました。
まぁ無理もないですけどね;
「あ、ゴメンね、溜息; 今日1日長かったなぁって思って。」
のんのが申し訳なさそうに、わこメインに謝ります。
ようやくわこもいつもの笑顔を浮かべました。
「もぉ〜、黒河さんにもビックリでしたけど、ないとさんとのんのさんの演技にもビックリでしたよ!」
当初、自分とのんのが不安に思っていた演技面は、どうやら何の問題もなかったようでした。
勘の鋭いわこをも欺き通した事が一番の裏付け証拠でしょうか。
「そーいや、わこ。参道でのアーチの電話、急に切って大丈夫やったん??」
「あ、そーだよ!黒河さんが来て、急に切っちゃったよね…??」
「あ、あれですか?あれ、繋がってないですよ;」
「…え?」
「電話しようと思ったんですけど、通じなかったんです。でも、何か、電話越しに話せば、アーチに伝わるかなぁ〜って;…どーかしてましたね、アタシ;;」
「あの状況なら無理ないよぉ;私がわこちゃんの立場だったら、同じ事してたよ、きっと;」
わこの返答にすかさずのんのがフォロー。やはり、のんのは広義の‘ケア’が上手いです。
歩けば歩くほど、次第に普段のNAWNの会話に戻ってきました。
そして10分後、駅まで着くと、のんのが急に立ち止まりました。
「ね〜ぇ、わこちゃん?ないとくんと一緒にご飯食べよっか!おなか減ったよねぇ??」
「あ、賛成ですっ♪ないとさんも行きますよねっ!行かないと、ここで大泣きしますっ!」
のんのの急な提案にもわこは即答で賛成しました。わこに押されて自分も言わずもがな賛成。
その時のわこの声は、ホンットにココロから出したような、嬉しそうな声でした。
個人的には、この時のわこの声が、このドッキリ企画の中で最も印象に残ってる声です。
まぁ個人論はいいとして、
そーゆーワケでそのまま駅には入らず、駅前通りの居酒屋に入る事に決定しまして。
ゆっくり食事しながら、ドッキリの詳細や、わこのホンネなどをほぼ夜通し吐露しまくりました。
その場において、そして後日、今度は自分とのんのが度肝を抜かれる事になったんですけどね。
…それはまた別のお話。。。
今回学べた事は、
【意識の深さを知るという事は難しいけれども、その深さを知ればその深さに合った大きなものが得られる】
という事ですかね。大変勉強になりました。
長い話となりましたが、読んでくださった方々、多謝です!!
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