さよなら、アネさん。
2009年3月9日 中長編。こんにちは、ないとです。
バイトが終わるまであと2週間ほどになりました。
指導を始めてから約4年。このバイト先では約3年を過ごしました。
起こった出来事を思い返すと、
楽しさが蘇る思い出もあれば、切なさが募ってくる思い出もあります。
しかし、その1つ1つは自分の心の奥に丁寧に保管され続けています。
そしてこの見えない財産は、自分が生き続ける限りその価値を失う事は決してありません。
最近は1回の指導を終える度に残りの指導回数を欠かさずチェックするようになりました。
それだけ限られた指導回数を大切にしなくてはいけないと、
無意識のうちに思っているのでしょう。
4年の朋輩のんのも同様の気持ちだと話してくれました。
また彼女はこのような事も言っていました。
『このバイト先での経験は私の人生を大きくプラスに変えた。』
この言葉通り、NAWNや他の朋輩達との出会いから今までの経験は、
自分にとっても非常に大きなものなのです。
自分やのんのがバイト先で有意義な経験をしてこれたのは朋輩のお陰もありますが、
それ以上に職員・黒河さんの存在が大きかったと言えます。
だからこそ、あの瞬間は正直迎えたくなかったんです…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
話は約2か月前、今年も恒例のメイバイ新年会が開かれ、
指導員数名と黒河さんとで飲みに行きました。
やはりメイバイの飲みは09年になっても楽しいもので、
参加した全員が楽しめた飲み会となりました。
現役の2年生は翌日の成人式に参加するという事(いつのネタだよ;)で、
09年の新年会は1次会でお開きという事になりました。
…と、ここまでは今までどおりのメイバイ飲みの流れだったのです。
しかし、今回はここから違った話へと進んでいくのでした。
駅の改札を通れば、「お疲れさま~!」の声を言い合うと共に、
指導員それぞれが帰りに使う列車のホームへと向かいます。
自分は途中まで黒河さんと同じ列車を使うので、同じホームへと向かっていました。
すると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきました。
のんの「ないとくん!黒河さん!お疲れさまです☆」
黒河さん「お~のんの!お疲れさん^^」
ないと「お疲れ~!って、のんのってアッチのホームじゃなかったっけ?」
のんの「うん、あのね、お2人に提案なんですけど、、、2次会、どっか行きません?」
まさかのんのから2次会のお誘いを受けるとは思いませんでした。
自分と黒河さんは一旦顔を見合わせた後、
な&黒「どっか行く!!^^」
と当たり前のように言い放ち、2次会開催は即座に決まりました。
自分達3人は黒河さんの地元駅まで列車で移動し、
駅前のチェーン居酒屋で飲むことにしました。
3人「かんぱ~い!」
2次会でも再度、高らかに声を上げてグラスをぶつけ合い、
そして真っ先に話題を提供したのは自分でした。
ないと「でさ、いきなり本題やけど、何で2次会誘ったん?」
のんの「え?いや~まだ飲み足りなくて^^」
黒河さん「ウソだウソだ!のんのが“飲み足りない”なんて言うハズなかろう^^」
ないと「うん、そやね。何か理由あるんやろ?相談?」
のんの「う…^^;」
黒河さん「相談か~。あ、アーチの事か?別れるのか?^^」
ないと「何でそんなに喰い付くんすか;しかも嬉しそうに;」
のんの「いえ、そーゆー話じゃないんですけど…;」
黒河さん「あ、じゃぁわこの事か?またドッキリやるか?」
ないと「どっかで聞いた事ある話っすね;」
のんの「ううん、そーゆー話でもなくて…;」
黒河さん「どーしたどーした?」
のんの「う~ん、、、ないとくんに1個訊いていい?」
ないと「はぃっ!?な、なんでしょうか?^^;」
のんの「最近の黒河さんを見てて、何か気付かない??」
な&黒「???」
ないと「気付く?ん~…、、、前髪切りました?」
のんの「う~ん、そこじゃないんだなぁ~;」
黒河さん「?? 前髪は切ったが?」
ないと「ん~…、、、ここんとこ、ビールに飽きている、とか。」
のんの「あ!それ良い着眼点かも!」
黒河さん「?? さっぱり見えん;」
ないと「あ~…、、、最近太りました?なんちゃtt…」
のんの「そう!そこ!!」
な&黒「(ビクッ!!!;)」
のんの「…あ、ゴメンナサイ;」
ないと「今、ボケたつもりなんだけども~…何かマズかった?^^;」
のんの「黒河さん、ズバリ訊きます!今、お腹に赤ちゃんいませんか?」
ないと「…えぇぇぇぇ!?^^;;」
黒河さん「あ~、よく分かったな、居るよ。(サラッと)」
ないと「…うぉぉぉぉぇぇぇぇぇ!?^^;;」
のんの「大当たり~!^^ (パチパチパチ…)」
ないと「黒河さん、マジっすか!?」
黒河さん「おぉ、マジ。まだ一部の人間しか知らないけどね。」
ないと「そ、そーなんですか、とりあえず、おめでとうございます。」
のんの「おめでとうございます^^」
黒河さん「さんきゅ~^^ それにしてもだ、のんのに気付かれてたか~;」
ないと「のんのは何で気づいたん?」
のんの「まず、話は去年の忘年会に遡ります。」
ないと「あ、うんうん。って、あの時何かおかしかったか?」
のんの「おかしかったよ~!だって、黒河さんがビール飲まなかったんだよ!?」
ないと「でも、それはビールに飽きたからだって…」
黒河さん「わり、それ、ウソ。^^」
ないと「軽っ!!;」
のんの「それで、その時、グレープフルーツジュースしか飲まない黒河さんが怪しくて。」
ないと「自分は何も違和感覚えんかったな;」
黒河さん「まぁ女優だからな、演技にはそれなりに自信がある^^」
のんの「それで仕事始めから服装が変わったんですよね^^」
黒河さん「よく気付いたな~^^ちょっとお腹を意識した服に変えたんだな。」
ないと「へぇ~。」
のんの「その疑いが確信に変わったのが今日。またビール飲まなかったんですよね。」
ないと「飲まなかったんじゃなくて飲めなかったのか~。」
黒河さん「まぁ、そういう事だ。子を気遣う良き母だろ?」
ないと「え、えぇ、まぁ。」
のんの「それで、大勢の前だと言うの申し訳ないかな~と思って、2次会に誘いました!」
黒河さん「なるほど、その心遣いに感謝するぞ^^」
ないと「そう言えば、今も飲んでるのソフトドリンクやわ!」
…これはビックリしました。黒河さんは妊娠していたのです。
婚約⇒妊娠なので、今流行のデキ婚ではないと思いますが、
自分は全く知らなかった情報だったので、本当にビックリしました。
しかし、おめでたい話に違いはないので、その後、話は盛り上がりを見せました。
旦那さんが海外出張中ではあるが、出産が近づいたらどうするのか、とか、
結婚式はどうするのか、とか、名前はどうするのか、とか。
話し合えば話し合うほど、濃い話し合いをする事ができました。
しかし、この盛り上がりは2次会後半には完全に収まってしまうのでした。
それは黒河さんの一言から始まったのです。
黒河さん「で、だ。4年の2人にもう1つ言っておきたいことがある。」
ないと「な、なんですか、急に。」
黒河さん「ズバリ言うとだな、会社から産休に入るように言われたんだ。」
のんの「それは当然ですよね、でもそんな急には…。」
黒河さん「それが、3月上旬辺りから休むことになってね。」
ないと「それじゃぁ自分たちよりも早く職場を離れるってことですか?」
黒河さん「そーゆーことになるな。教育関係(の仕事)は一番暇な時期だし。」
のんの「えっと…じゃぁ職場にはいつ頃、戻られるんですか?」
黒河さん「ん~、私自身はもう戻らないつもりでもいるんだな…。」
ないと「え?じゃぁもう仕事辞めちゃうって事ですか?」
黒河さん「ん~、たぶん。」
その時の黒河さんは、深刻と言うよりは神妙な顔つきでした。
どうも、ムリに落ち着いた表情を浮かべている、というか。。。
のんの「…寂しいですね;私達は3年ご一緒させていただきましたから。。。」
黒河さん「もう3年か…、早いな。」
ないと「思えば、最初は自分1人でしたもんね、指導員w」
黒河さん「あぁ、内心焦ってたな;でも、のんのが1ヵ月後に来て…。」
のんの「最初は全然馴染めなかったんだよね、私が;」
ないと「ぶっちゃけ、のんのとは仲良くなれないと思った事もあったよw」
黒河さん「でも今、2人は平穏に“付き合ってる”もんな~。」
な&の「違う違う;」
黒河さん「あ、そーだっけ?」
ないと「何よりもアーチが可哀想だなw」
のんの「最近、こういうネタ多いよねw;」
黒河さん「ま、アーチなんか今はどーでもいいんだ^^」
ないと「アーチ涙眼;」
のんの「同じく;」
黒河さん「で、まぁよく(個別指導を)支えてくれたよ、2人とも。」
ないと「のんののお陰もありますし、アーチやわこの存在もデカかったですね。」
黒河さん「NAWNな~。立派な4人組だよ、ほんとに。」
のんの「NAWNって呼び方も、黒河さんが付けたんじゃなかったでしたっけ??」
ないと「そや、そーいえばそやったな。」
黒河さん「今となっては埼玉県南部で知らない人は居ない4人組に…。」
ないと「なってない×2^^;」
のんの「しかも規模が中途半端…^^;」
そんなこんなで出会いからNAWN結成から後輩誕生から、色んな話をしました。
自分ものんのも黒河さんも、記憶は褪せていませんでした。
それだけ、メイバイでの経験はインパクトのあるものだったのでしょう。
繰り返しになりますが、
そのような環境でやってこれたのも自身が大きく成長できたのも、黒河さんのお陰なんです。
だからこそ黒河さんが自分よりも先に職場を去ってしまうのは、本当に心苦しいものでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2月末。黒河さんが産休前最後の仕事を終えた日。
我々指導員は‘送別会’ならぬ‘産休会’を開きました。
(会は、“Thank you”の意味も込めて‘産休会’と名付けました。)
各指導員が、交代で黒河さんとお話するという流れで会を進めました。
(4年の自分とのんのは1月に話すだけ話したので、自分らは抜きで。)
どの指導員と話す時も、黒河さんは笑顔で話されていました。
そして、戻ってくる指導員みんなが、黒河さんに心から褒められたと言ってきました。
その褒め方も、抽象的に「頑張ったな」ではなく、
具体的に「○月○日の指導は良かった」とか、
生徒さんと黒河さんとの面談での生徒さんの言葉を教えてくれるだとか、
その1つ1つが温かく、そして各指導員にとって忘れられないものなのでした。
女性の指導員は戻ってくるなり涙を流す者もおり、それに釣られて泣く者もいました。
しかし、黒河さんは決して涙を見せようとはせず、
指導員1人1人に力強い言葉を渡していました。
会では終始、自分たちがよく知っている、普段の頼れる‘アネさん’のままだったのです。
産休会終了後、黒河さんと別れる時がやってきました。
会が黒河さんの地元駅での開催だったので、駅の階段前でのひと時。
1年生から順番に、黒河さんと握手を交わし、
「別れるのが辛くなるから」という黒河さんの要望で、
終わった者から階段を上がり、黒河さんの視界から消えるという流れでした。
1年生・2年生と終わり、残ったのは上級生6人。
3年の4人も握手を交わし、名残惜しそうに階段を上がっていきます。
中でも朋輩わこは、涙を流しながらなかなか階段を上がろうとせず、
最後は階段の柱からこちらを覗き見る仕草まで見せました。
それを同情するかのように、アーチが段上まで連れて行きます。
黒河さんはその様子を、何かホッとした表情で見ていました。
最後に我々4年の番です。
のんのには「良い社会人に、そして良いお母さんになるんだよ」と、
黒河さんはのんのの手を両手で握りながら言いました。
のんのは涙で何も言えない様子でしたが、
黒河さんの眼を見つめながら何度も細かく頷いていました。
黒河さんはそれを見ると一度眼を瞑り、それからのんのの手をゆっくりと放しました。
黒河さんの眼を見て、今度は自分が手を差し出しました。
その時の黒河さんの眼は、何か言いたそうな眼をしていましたが、
何が言いたかったのか、その時は分かりませんでした。
黒河さんは自分の右手を両手で掴むと、そのまま力強く握りしめました。
その力は相当強く感じられ、痛さを感じるギリギリの強さだったような気がします。
「…さんきゅ。」
辺りは特に騒がしくなかったにもかかわらず、その声は聴き取れませんでした。
しかし、口の動きをみると、自然とその言葉が読み取れたのです。
自分に対する黒河さんの言葉は、そのたった一言、その聴き取れない一言だけ。
呟きが故意であったのかは分かりませんが、その気持ちは確実に自分の心に届きました。
その後1分間ほど、黒河さんは自分の右手を放す事はしませんでした。
その間、繋がれている手を通じて、黒河さんの思いが伝わってきた、そんな気がしました。
全ての指導員が黒河さんとの別れの瞬間を終えました。
最後、自分とのんのが駅の階段を上がろうとした時、
わこが階段をダッシュで降りてきて、一言。
「黒河さん!私達の事!忘れないですよね!?」
駅前には人も何人か居ましたが、そんな事は関係ないとばかりに大声でわこは訊きました。
すると、黒河さんは答えました。
「…お前らの顔なんか忘れるに決まってんだろ!…だから、忘れないように必ず会いに…!」
そう言った所で、黒河さんは背を向けて、家の方向へ足早に歩いて行ったのでした。
最後の最後まで黒河さんらしい発言でしたが、
その発言の意図する所は指導員全員が分かっていました。
そして各指導員は決意したのです。
「いつか、もっと成長した姿を黒河さんに見せに行こう!」
と。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
産休会後、初の出勤日。もちろん、黒河さんはいません。
黒河さんの机の上も既に閑散としており、それを見て、再度哀しさが湧いてきました。
同僚だった蒼井さんも寂しさを口にしていました。
その日はちょうどのんのも指導があったので、
指導終わりもお互いに黒河さんの話をしました。
ちょっぴり哀しさに包まれながら2人で帰ろうとした時、
とある職員さんの会話が聞こえてきました。
「このマグカップって誰のだっけ??」
「あ、これ黒河さんのじゃない?忘れていっちゃったのかな??」
この会話を聴き、自分たちは顔を見合わせました。
そして気づいた時には、職員さんからそのマグカップを受け取っていたのです。
ないと「…行くか!」
のんの「うん!行こう!」
(別れはツライものだけど、また会いに行けばいいじゃないか!)
そんな事をお互いに思いつつ、自分達4年2人は嬉しさを胸に、
再びあの‘アネさん’の元へと向かっていくのでした。
〔終〕
…ちなみに、マグカップを忘れたのは故意ではなく、ホントに偶然でしたww
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございましたmm
バイトが終わるまであと2週間ほどになりました。
指導を始めてから約4年。このバイト先では約3年を過ごしました。
起こった出来事を思い返すと、
楽しさが蘇る思い出もあれば、切なさが募ってくる思い出もあります。
しかし、その1つ1つは自分の心の奥に丁寧に保管され続けています。
そしてこの見えない財産は、自分が生き続ける限りその価値を失う事は決してありません。
最近は1回の指導を終える度に残りの指導回数を欠かさずチェックするようになりました。
それだけ限られた指導回数を大切にしなくてはいけないと、
無意識のうちに思っているのでしょう。
4年の朋輩のんのも同様の気持ちだと話してくれました。
また彼女はこのような事も言っていました。
『このバイト先での経験は私の人生を大きくプラスに変えた。』
この言葉通り、NAWNや他の朋輩達との出会いから今までの経験は、
自分にとっても非常に大きなものなのです。
自分やのんのがバイト先で有意義な経験をしてこれたのは朋輩のお陰もありますが、
それ以上に職員・黒河さんの存在が大きかったと言えます。
だからこそ、あの瞬間は正直迎えたくなかったんです…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
話は約2か月前、今年も恒例のメイバイ新年会が開かれ、
指導員数名と黒河さんとで飲みに行きました。
やはりメイバイの飲みは09年になっても楽しいもので、
参加した全員が楽しめた飲み会となりました。
現役の2年生は翌日の成人式に参加するという事(いつのネタだよ;)で、
09年の新年会は1次会でお開きという事になりました。
…と、ここまでは今までどおりのメイバイ飲みの流れだったのです。
しかし、今回はここから違った話へと進んでいくのでした。
駅の改札を通れば、「お疲れさま~!」の声を言い合うと共に、
指導員それぞれが帰りに使う列車のホームへと向かいます。
自分は途中まで黒河さんと同じ列車を使うので、同じホームへと向かっていました。
すると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきました。
のんの「ないとくん!黒河さん!お疲れさまです☆」
黒河さん「お~のんの!お疲れさん^^」
ないと「お疲れ~!って、のんのってアッチのホームじゃなかったっけ?」
のんの「うん、あのね、お2人に提案なんですけど、、、2次会、どっか行きません?」
まさかのんのから2次会のお誘いを受けるとは思いませんでした。
自分と黒河さんは一旦顔を見合わせた後、
な&黒「どっか行く!!^^」
と当たり前のように言い放ち、2次会開催は即座に決まりました。
自分達3人は黒河さんの地元駅まで列車で移動し、
駅前のチェーン居酒屋で飲むことにしました。
3人「かんぱ~い!」
2次会でも再度、高らかに声を上げてグラスをぶつけ合い、
そして真っ先に話題を提供したのは自分でした。
ないと「でさ、いきなり本題やけど、何で2次会誘ったん?」
のんの「え?いや~まだ飲み足りなくて^^」
黒河さん「ウソだウソだ!のんのが“飲み足りない”なんて言うハズなかろう^^」
ないと「うん、そやね。何か理由あるんやろ?相談?」
のんの「う…^^;」
黒河さん「相談か~。あ、アーチの事か?別れるのか?^^」
ないと「何でそんなに喰い付くんすか;しかも嬉しそうに;」
のんの「いえ、そーゆー話じゃないんですけど…;」
黒河さん「あ、じゃぁわこの事か?またドッキリやるか?」
ないと「どっかで聞いた事ある話っすね;」
のんの「ううん、そーゆー話でもなくて…;」
黒河さん「どーしたどーした?」
のんの「う~ん、、、ないとくんに1個訊いていい?」
ないと「はぃっ!?な、なんでしょうか?^^;」
のんの「最近の黒河さんを見てて、何か気付かない??」
な&黒「???」
ないと「気付く?ん~…、、、前髪切りました?」
のんの「う~ん、そこじゃないんだなぁ~;」
黒河さん「?? 前髪は切ったが?」
ないと「ん~…、、、ここんとこ、ビールに飽きている、とか。」
のんの「あ!それ良い着眼点かも!」
黒河さん「?? さっぱり見えん;」
ないと「あ~…、、、最近太りました?なんちゃtt…」
のんの「そう!そこ!!」
な&黒「(ビクッ!!!;)」
のんの「…あ、ゴメンナサイ;」
ないと「今、ボケたつもりなんだけども~…何かマズかった?^^;」
のんの「黒河さん、ズバリ訊きます!今、お腹に赤ちゃんいませんか?」
ないと「…えぇぇぇぇ!?^^;;」
黒河さん「あ~、よく分かったな、居るよ。(サラッと)」
ないと「…うぉぉぉぉぇぇぇぇぇ!?^^;;」
のんの「大当たり~!^^ (パチパチパチ…)」
ないと「黒河さん、マジっすか!?」
黒河さん「おぉ、マジ。まだ一部の人間しか知らないけどね。」
ないと「そ、そーなんですか、とりあえず、おめでとうございます。」
のんの「おめでとうございます^^」
黒河さん「さんきゅ~^^ それにしてもだ、のんのに気付かれてたか~;」
ないと「のんのは何で気づいたん?」
のんの「まず、話は去年の忘年会に遡ります。」
ないと「あ、うんうん。って、あの時何かおかしかったか?」
のんの「おかしかったよ~!だって、黒河さんがビール飲まなかったんだよ!?」
ないと「でも、それはビールに飽きたからだって…」
黒河さん「わり、それ、ウソ。^^」
ないと「軽っ!!;」
のんの「それで、その時、グレープフルーツジュースしか飲まない黒河さんが怪しくて。」
ないと「自分は何も違和感覚えんかったな;」
黒河さん「まぁ女優だからな、演技にはそれなりに自信がある^^」
のんの「それで仕事始めから服装が変わったんですよね^^」
黒河さん「よく気付いたな~^^ちょっとお腹を意識した服に変えたんだな。」
ないと「へぇ~。」
のんの「その疑いが確信に変わったのが今日。またビール飲まなかったんですよね。」
ないと「飲まなかったんじゃなくて飲めなかったのか~。」
黒河さん「まぁ、そういう事だ。子を気遣う良き母だろ?」
ないと「え、えぇ、まぁ。」
のんの「それで、大勢の前だと言うの申し訳ないかな~と思って、2次会に誘いました!」
黒河さん「なるほど、その心遣いに感謝するぞ^^」
ないと「そう言えば、今も飲んでるのソフトドリンクやわ!」
…これはビックリしました。黒河さんは妊娠していたのです。
婚約⇒妊娠なので、今流行のデキ婚ではないと思いますが、
自分は全く知らなかった情報だったので、本当にビックリしました。
しかし、おめでたい話に違いはないので、その後、話は盛り上がりを見せました。
旦那さんが海外出張中ではあるが、出産が近づいたらどうするのか、とか、
結婚式はどうするのか、とか、名前はどうするのか、とか。
話し合えば話し合うほど、濃い話し合いをする事ができました。
しかし、この盛り上がりは2次会後半には完全に収まってしまうのでした。
それは黒河さんの一言から始まったのです。
黒河さん「で、だ。4年の2人にもう1つ言っておきたいことがある。」
ないと「な、なんですか、急に。」
黒河さん「ズバリ言うとだな、会社から産休に入るように言われたんだ。」
のんの「それは当然ですよね、でもそんな急には…。」
黒河さん「それが、3月上旬辺りから休むことになってね。」
ないと「それじゃぁ自分たちよりも早く職場を離れるってことですか?」
黒河さん「そーゆーことになるな。教育関係(の仕事)は一番暇な時期だし。」
のんの「えっと…じゃぁ職場にはいつ頃、戻られるんですか?」
黒河さん「ん~、私自身はもう戻らないつもりでもいるんだな…。」
ないと「え?じゃぁもう仕事辞めちゃうって事ですか?」
黒河さん「ん~、たぶん。」
その時の黒河さんは、深刻と言うよりは神妙な顔つきでした。
どうも、ムリに落ち着いた表情を浮かべている、というか。。。
のんの「…寂しいですね;私達は3年ご一緒させていただきましたから。。。」
黒河さん「もう3年か…、早いな。」
ないと「思えば、最初は自分1人でしたもんね、指導員w」
黒河さん「あぁ、内心焦ってたな;でも、のんのが1ヵ月後に来て…。」
のんの「最初は全然馴染めなかったんだよね、私が;」
ないと「ぶっちゃけ、のんのとは仲良くなれないと思った事もあったよw」
黒河さん「でも今、2人は平穏に“付き合ってる”もんな~。」
な&の「違う違う;」
黒河さん「あ、そーだっけ?」
ないと「何よりもアーチが可哀想だなw」
のんの「最近、こういうネタ多いよねw;」
黒河さん「ま、アーチなんか今はどーでもいいんだ^^」
ないと「アーチ涙眼;」
のんの「同じく;」
黒河さん「で、まぁよく(個別指導を)支えてくれたよ、2人とも。」
ないと「のんののお陰もありますし、アーチやわこの存在もデカかったですね。」
黒河さん「NAWNな~。立派な4人組だよ、ほんとに。」
のんの「NAWNって呼び方も、黒河さんが付けたんじゃなかったでしたっけ??」
ないと「そや、そーいえばそやったな。」
黒河さん「今となっては埼玉県南部で知らない人は居ない4人組に…。」
ないと「なってない×2^^;」
のんの「しかも規模が中途半端…^^;」
そんなこんなで出会いからNAWN結成から後輩誕生から、色んな話をしました。
自分ものんのも黒河さんも、記憶は褪せていませんでした。
それだけ、メイバイでの経験はインパクトのあるものだったのでしょう。
繰り返しになりますが、
そのような環境でやってこれたのも自身が大きく成長できたのも、黒河さんのお陰なんです。
だからこそ黒河さんが自分よりも先に職場を去ってしまうのは、本当に心苦しいものでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2月末。黒河さんが産休前最後の仕事を終えた日。
我々指導員は‘送別会’ならぬ‘産休会’を開きました。
(会は、“Thank you”の意味も込めて‘産休会’と名付けました。)
各指導員が、交代で黒河さんとお話するという流れで会を進めました。
(4年の自分とのんのは1月に話すだけ話したので、自分らは抜きで。)
どの指導員と話す時も、黒河さんは笑顔で話されていました。
そして、戻ってくる指導員みんなが、黒河さんに心から褒められたと言ってきました。
その褒め方も、抽象的に「頑張ったな」ではなく、
具体的に「○月○日の指導は良かった」とか、
生徒さんと黒河さんとの面談での生徒さんの言葉を教えてくれるだとか、
その1つ1つが温かく、そして各指導員にとって忘れられないものなのでした。
女性の指導員は戻ってくるなり涙を流す者もおり、それに釣られて泣く者もいました。
しかし、黒河さんは決して涙を見せようとはせず、
指導員1人1人に力強い言葉を渡していました。
会では終始、自分たちがよく知っている、普段の頼れる‘アネさん’のままだったのです。
産休会終了後、黒河さんと別れる時がやってきました。
会が黒河さんの地元駅での開催だったので、駅の階段前でのひと時。
1年生から順番に、黒河さんと握手を交わし、
「別れるのが辛くなるから」という黒河さんの要望で、
終わった者から階段を上がり、黒河さんの視界から消えるという流れでした。
1年生・2年生と終わり、残ったのは上級生6人。
3年の4人も握手を交わし、名残惜しそうに階段を上がっていきます。
中でも朋輩わこは、涙を流しながらなかなか階段を上がろうとせず、
最後は階段の柱からこちらを覗き見る仕草まで見せました。
それを同情するかのように、アーチが段上まで連れて行きます。
黒河さんはその様子を、何かホッとした表情で見ていました。
最後に我々4年の番です。
のんのには「良い社会人に、そして良いお母さんになるんだよ」と、
黒河さんはのんのの手を両手で握りながら言いました。
のんのは涙で何も言えない様子でしたが、
黒河さんの眼を見つめながら何度も細かく頷いていました。
黒河さんはそれを見ると一度眼を瞑り、それからのんのの手をゆっくりと放しました。
黒河さんの眼を見て、今度は自分が手を差し出しました。
その時の黒河さんの眼は、何か言いたそうな眼をしていましたが、
何が言いたかったのか、その時は分かりませんでした。
黒河さんは自分の右手を両手で掴むと、そのまま力強く握りしめました。
その力は相当強く感じられ、痛さを感じるギリギリの強さだったような気がします。
「…さんきゅ。」
辺りは特に騒がしくなかったにもかかわらず、その声は聴き取れませんでした。
しかし、口の動きをみると、自然とその言葉が読み取れたのです。
自分に対する黒河さんの言葉は、そのたった一言、その聴き取れない一言だけ。
呟きが故意であったのかは分かりませんが、その気持ちは確実に自分の心に届きました。
その後1分間ほど、黒河さんは自分の右手を放す事はしませんでした。
その間、繋がれている手を通じて、黒河さんの思いが伝わってきた、そんな気がしました。
全ての指導員が黒河さんとの別れの瞬間を終えました。
最後、自分とのんのが駅の階段を上がろうとした時、
わこが階段をダッシュで降りてきて、一言。
「黒河さん!私達の事!忘れないですよね!?」
駅前には人も何人か居ましたが、そんな事は関係ないとばかりに大声でわこは訊きました。
すると、黒河さんは答えました。
「…お前らの顔なんか忘れるに決まってんだろ!…だから、忘れないように必ず会いに…!」
そう言った所で、黒河さんは背を向けて、家の方向へ足早に歩いて行ったのでした。
最後の最後まで黒河さんらしい発言でしたが、
その発言の意図する所は指導員全員が分かっていました。
そして各指導員は決意したのです。
「いつか、もっと成長した姿を黒河さんに見せに行こう!」
と。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
産休会後、初の出勤日。もちろん、黒河さんはいません。
黒河さんの机の上も既に閑散としており、それを見て、再度哀しさが湧いてきました。
同僚だった蒼井さんも寂しさを口にしていました。
その日はちょうどのんのも指導があったので、
指導終わりもお互いに黒河さんの話をしました。
ちょっぴり哀しさに包まれながら2人で帰ろうとした時、
とある職員さんの会話が聞こえてきました。
「このマグカップって誰のだっけ??」
「あ、これ黒河さんのじゃない?忘れていっちゃったのかな??」
この会話を聴き、自分たちは顔を見合わせました。
そして気づいた時には、職員さんからそのマグカップを受け取っていたのです。
ないと「…行くか!」
のんの「うん!行こう!」
(別れはツライものだけど、また会いに行けばいいじゃないか!)
そんな事をお互いに思いつつ、自分達4年2人は嬉しさを胸に、
再びあの‘アネさん’の元へと向かっていくのでした。
〔終〕
…ちなみに、マグカップを忘れたのは故意ではなく、ホントに偶然でしたww
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございましたmm
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